第400回 首都圏の私立・国立中学校の受験状況

22年の日本国内での出生数が初めて80万人の大台を割りました。その一方で,首都圏の私立・国立中学校の受験者総数と受験率は,過去最多・最高となりました。

いったいこれはどういうことなのでしょう。それには次の3つの問題点や,変化があるようです。

一つ目は,受験者層の変化です。一昔前では,一定の基礎学力がある子どもが偏差値の高い学校を目指すというものがほとんどでした。そしてその場合,親も勉強をつきっきりで手伝うという,専業主婦家庭がほとんどというスタイルでした。一方,現代の中学校受験では,一様に難関校を目指すというものではなく,子どもの学力に応じた進学校を探そうという動きになっています。つまり,それだけ受験者層が広がっているということです。

二つ目は,受験内容の変化です。それは,中学校受験のテスト内容が,知識重視型から思考力重視型へと変化が進んでいるということです。そのため,各塾では,それなりの対応をとっています。しかし,この対応にも問題点がありそうです。それは,思考力問題を,旧来のパターン演習型で乗り切ろうとする方針の塾の場合では,子どもたちの学習量を今まで以上に増大させかねないという懸念が強まっているからです。

三つ目は家庭の役割です。以前の中学校受験での親の役割は「子どもにいかに塾の課題をこなさせるか」にありました。ところが,思考力を求められる現在の中学校受験では,家庭の「学習哲学」と「学習文化」も加えて問われるようになっています。つまり,家庭では子どもの幼少期から,家庭内の語彙力や教養度を高めることが,より強く求められるようになっているのです。

以上の情報は,日経新聞(夕刊)2023年4月18日号に掲載された,教育家 小川大介氏の「受験のリアル」-中学編-の記事を基にしています。地方にいるとピンとこないところもありますが,首都圏では地方とは違った変化が着々と進んでいるようです。