第399回 スマホの弊害

私と同年代の友人で,30歳くらいから約40年もの間にわたって,お付き合いしてきた保険屋さんがいます。彼は働き者で,お昼ご飯は移動中の車の中で菓子パンをかじったり,コンビニ弁当をかきこんだりして,忙しく働いていました。仕事は順調で,60代では自社ビルを入手し,「さぁこれからゆっくり趣味でも楽しもうか」といったポジションに辿り着いていました。

ところが,あろうことか60代後半から認知症になってしまい,施設に入居するという事態になりました。

彼がなぜそのような状況になってしまったのか,その原因はわかりませんが,私は食事や睡眠などの生活習慣も大いに影響しているのではないかと思います。アルツハイマーのような認知症は,脳内に溜まったゴミが原因であると言われますが,充分な睡眠はそれらを洗い流す役目を持っているようです。また,食品添加物の少ない,体に良い食事は,健康な体作りに欠かすことはできないでしょう。

ところで最近私は,「食事では健康に良い食材と量を選ぶのだから,『情報』においても,健全な心や精神を保つ上でも適切な質と量を備えたものを選ぶべきではないか」と考えています。

スマホが手元にあると,スマホから発せられる音などがきっかけで,ついついそれを手に取ってしまいます。そしてたいして重要でもないニュースを読みふけってみたり,フェイスブックで他人の生活を覗き見たりしがちです。こんな生活習慣は,心や精神の発達に寄与するのでしょうか。

2014年に,仙台市と加齢医学研究所などのチームが,SNSなどの利用状況について,市内の中学生2万人以上を調査しました。すると,1日のSNS利用が1時間以上の子は,家庭学習の時間にかかわらず,テストの点数が低いという結果が出たそうです。また岐阜県岐南町にある,おくむらメモリークリニックの奥村歩理事長によると,「ここ10年ほど前から30~50代の人の若年性認知症が増えている。その患者の話を聞くと,スマホの利用時間が長くて依存状態にある人との相関関係が強いと感じられる」と,述べておられます。

脳は「ぼんやり」しているときでも,相当なエネルギーを使っているようです。ところがスマホを使い過ぎると,脳の中で情報を整理する時間がなくなり,脳の中がゴミ屋敷のようになるそうです。脳の中がこのような状態になると,認知障害のみならず新タイプの「うつ」を引き起こしやすくなるようです。

以上は,日経新聞2023年3月25日夕刊の記事を参考にしたものですが,この記事を読むと,スマホの弊害や危険性がよく理解できました。とは言っても,なかなかスマホから意識を離すのは難しいものです。そのような場合は,スマホを持たずに散歩したりして,スマホをシャットダウンする時間をつくるのが良いようです。