第397回 楽しい会話のコツ

皆さんには「会話をするのが楽しい」という人とともに,「会話をするのが億劫で,何となく避けたい」という人もおられることでしょう。たいていの人は,自分の自慢したいことなどに話を向けられると,嬉しくなって,そのことについて滔々と話したくなるものです。

先日私はある年配の方と夕食をご一緒しながら,そのような体験をしました。その方に,全盛期の頃の仕事ぶりについて話しを向けたところ,とても気持ち良さそうに長時間そのことについてお話しされました。その結果,その会食ではその方の仕事についての話がほとんどを占めてしまいましたが,その方は大変満足そうにして,お帰りになりました。
私は典型的な理系人間なので,会話は「要点だけ」が中心となってしまい,あまり上手ではありません。しかし,会話のコツのようなものは掴んでいるつもりです。それは「質問力」だと思っています。先ほどの方の例でもおわかりのように,相手の方が「ぜひ話したい」とか,「特に興味を持っている」というような事柄を探り,それに対して質問を投げかけていくと,相手の方はどんどんと話し込んでいかれます。その結果,その会談の内容のうち,相手の方の話が9割,自分のことについては1割というようなことも起きますが,それはそれで良いのではないかと思っています。

さて,会話に関連した話として,日本講演新聞を読んでいて,落語家立川談慶氏の講演ダイジェスト文に目が止まりました。会話において大切なことは,「何をしゃべるか」よりも,「しゃべらない方がいいこと3つを押さえる」ことだそうです。

その3つとは,「悪口」「自慢話」「愚痴」です。確かにこの3つを長々としゃべられたら,聞く方は閉口してしまいますね。

ただ,自分の方から,これらをどうしても話したくなったときは,次のようなテクニックを使うといいそうです。それは,それらの内容を言う前に,「ごめん,こんなことを言うと,悪口に聞こえちゃうかも」とか,「これ自慢話するわけじゃないんだけどさ」とか,前振りを入れることだそうです。

何はともあれ,会話は「キャッチボール」であり,「プレゼント」でもあります。相手から一方的に球が飛んでくるばかりの会話や,トゲトゲのプレゼントを受け取るような会話なら,そのような会話をする方とは次第に疎遠になってしまうことでしょう。会話においては,いつもこれらのことを心掛けていきたいものです。