第396回 日本人の優しさ

3月12日に東京ドームでは,日本対オーストラリアのWBCの野球試合が行われました。この時,初回に打席に立った大谷選手は先制のスリーランホームランを打ちました。このホームランボールを手にしたのは,「福島の女子大生」のようです。ここで驚くべきことが起き,海外メディアも「自国では有り得ない光景だ!」と絶賛して報道したとのことです。

何とその女性は,そのキャッチしたホームランボールを近くにいた人に手渡したそうです。するとその手渡された人はそのボールを持って記念写真を撮り,また次の人に手渡したそうです。そのようにしてボールは次々に周りの人の手に渡り,何と最後にはめでたく初めにキャッチした女性の元へと戻ったそうです。

私はこの話を知って,「『日本人の優しさ』はまだまだ日本人の中に生きている。」と感動しました。

このような「日本人の優しさ」は実は1771年に「犬が単独でお伊勢参りをした」という記録が残っていることからも,伺い知ることができます。

これは「犬の伊勢参り」として,日本各地から犬が伊勢まで行き,また飼い主の元に戻っていくという習わしのことです。犬の飼い主が様々な事情によりお参りすることができなかったとします。その場合は「お蔭参り」と記した木札と銭を紐に通して,犬の首に巻き付けておくと,道行く人々がリレー方式で犬を伊勢まで送り,また飼い主の元へと戻してくれるという仕組みです。帰ってきた犬の中には,お金がまったく使われず,そのままの状態だったものもあるようです。このようなしきたりは,今から200年以上も前のものです。当時は決して豊かな社会でもありませんでした。そのような中,犬のお金を取りもせず,犬に施しをするなどして,お伊勢参りを成し遂げさせた人々の信心深さや,心の優しさを垣間見ることができます。私たちも先人が培ってきたこのような精神を,これからも受け継いでいきたいものです。