第385回 夫婦のトリセツ

世間では,夫と妻の関係について悩んでいる人も少なからずおられることでしょう。その悩みの原因は,男性と女性の脳の違いにあるようです。例えば,こんな会話について,皆さんはどう捉えるでしょうか。
妻:「お義母さんに,こんなことを言われちゃった。悲しい」
夫:「おふくろにも悪気はないんだよ。気にしなくていい。君もこうすればよかったんだよ」
このような対応をした男性は心の中で「結構やるじゃんオレ。公平で親切な対応だぜ…。しっかり解決策も提案しているし…」などと,満足感を覚えていることでしょう。

ところが,その言葉を聞いた女性としてはどうでしょうか。「この人ダメ。私の味方じゃないわ。見限るべきね」と感じる人も多いことでしょう。

では次に,こんなケースはどうでしょうか。

これは,新婚家庭でのワンシーンです。夫が仕事から帰って来たので,妻がご飯とおかずを用意しました。それらが並べられたテーブルを見て夫は「おかず,これだけ?」と言いました。
女性はこのような言葉を吐く男性の心境を理解できるでしょうか。またその言葉を聞いた妻の気持ちはいかがなものでしょうか。

男性と女性のすれ違いは,多くの男性の脳が「問題解決型」なのに対し,多くの女性の脳が「共感型」であることに原因するようです。

前者のケースで言えば,妻は「悲しい気持ちを夫に共感して欲しい」という意味で話を切り出しているのに対し,夫は問題解決の方向で答えています。そこにギャップが生まれるのです。
だから,こんなとき夫は「そうなんだ,それは悲しかったね」などと,まず共感の言葉を発するべきなのです。

また後者のケースでは,女性脳にはわかりにくい感覚かもしれませんが,このようなとき夫は問題解決型の脳の働きを使い,心の中で次のように考えているものです。

「このおかずでいつものようにご飯2杯で食べればいいんだよね? 後から次の料理が出てくることはないよね?」つまり夫の「おかず,これだけ?」というフレーズは,単なるスペック確認だけの意味を持ちます。一方,妻にしてみれば「一日家にいて,たったこれだけの料理しか作れないのかよ」という意味のフレーズとして捉えがちです。このような夫や妻,男性と女性のすれ違いの根本原因は,両者の脳の違いにあるようです。

このようなことは,親と子の間にも起こりがちです。夫が妻に対して「メシできたのか?」「今日何してた?」という感じで聞けば,妻はムッとします。それと同じように子どもに対して「宿題やったの?」「学校どうだった?」という感じで接すれば,子どもは「ウルセーナ!」と答えることでしょう。このようなギャップやいざこざを避け,男女間などの関係を良くするにはどうしたらいいのでしょうか。一例としては,夫が妻へ返す言葉のトリセツ,つまり以下のような「妻語」を学ぶという手があります。

・例えば,相手の話がポジティブなら,「いいね」「よかったね」で受ける。
・もし相手の話がネガティブで,にわかに共感できないときは「そうか」「そうなんだ」「そういうこともあるんだね」などと,「ソ」で返す。

以上のような話は,黒川伊保子さんが書かれた『夫婦のトリセツ』〈講談社+α新書〉に詳述されています。男女関係などに悩まれたり,人間関係にご興味のある方は,一読されてはいかがでしょうか。