第383回 コミュニケーションのテクニック

私たちにはあまりなじみがないかもしれませんが,警視庁には公安部という部署があり,諜報活動(いわゆるスパイ活動)などを行っています。現在,日本カウンターインテリジェンス協会 代表の稲村悠一氏は,かつて警視庁においてカウンターインテリジェンス(スパイ対策)の最前線で諜報活動捜査などを行ってきました。最近の氏は,諜報活動やサイバー攻撃への警鐘を鳴らす活動を推進されています。

氏の著書には『元公安捜査官が教える「本音」「嘘」「秘密」を引き出す技術』があり,それを読むと,プロの手口と手法がわかるようです。そして,それらを良い意味でうまく活用すると,私たちの日頃のコミュニケーションにも活かせるとのことです。

例えば,ある上司が部下から情報を引き出し,「部下の心を掴み,部内のヤル気を高め,雰囲気を良くしたい」と考えたとします。このようなときの氏の諜報活動の応用としては,次のような手法が考えられるようです。

例えば,会議の際に上司は部下に「〇月〇日は俺の息子の誕生日だから,この日は先に帰るよ」と言います。続いて部下に「君も娘さんの誕生日には,早く帰っていいからな」と言います。するとその流れの中で「で,娘さんの誕生日はいつ?」と聞け,部下の娘さんの誕生日という情報を得ることができます。さらにそのとき,「君の誕生日のときも早く帰っていいからな」と言えば,部下の誕生日まで自然に聞き出せるというわけです。このようにすれば,自然な形で,情報が集まるわけです。

また,これらの日をスマホのダイアリーなどに記録しておき,その日になったら「誕生日おめでとう。今日は早く帰っていいからな」などと部下を労ってあげることもできます。このようなことを推し進めれば,部下との信頼関係も高まり,部内の雰囲気も良くなっていくことでしょう。また,このような配慮は,家庭内においても応用することができるでしょう。前述の本は,そのような観点から読み,参考になりそうなことを日々実行していけば,周りの人々との関係も,さらに良くなっていくかもしれません。