第373回 大鳥居の不思議

私の名前が「鳥居」ということから,神社の鳥居には興味があります。皆さんはこの大鳥居については,よくご存知のことでしょう。
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これは海に建つ世界遺産「厳島神社」の大鳥居です。平清盛が造営したとされ,現代に至るまで数回にわたって建て替えられたとされます。

現存しているものは明治8年に建てられたもので,総重量は60t,高さは16.6mもあります。主柱となる2本は樹齢500年を超える楠(くすのき)が使われています。以前,現地でこれを見たとき,私が一番不思議に思ったのが,「なぜこの大鳥居は海の中に,そして砂地の上に聳え立つことができているのか」ということです。

私が厳島神社を訪れたときはちょうど引き潮で,この大鳥居まで歩いて行くことができました。しかし,広島湾の干満差は最大で4mもあると言われ,満潮のときには4mも海の中に沈み込み,とてもここまでは歩いて渡ることはできません。こんな悪条件の中で,なぜこの大鳥居は倒れることなく堂々と聳え立っていられるのでしょうか。

その秘密の1つ目のポイントは「土台」にあります。この大鳥居は主となる柱が砂の中に深く打ち込まれた構造とは異なります。砂の上に作られたしっかりした土台の上に乗っているという形なのです。その土台は千本杭と呼ばれ,約30~100本の松杭が大鳥居の底部分にぎっしりと打ち込まれているのです。そのような構造をしているために大鳥居は傾いたり,倒れたりしないのです。

さて,この大鳥居がそのような工法で作られているとすると,もう1つの疑問が沸いてきます。

潮が満ちたとき,この鳥居が4mも海の中に沈むこともあるとすれば,「浮力が効いて,浮かび上がってしまい,その結果倒れたりしないのか」という問題です。それを解決するのが,上部の屋根の部分(笠木,島木)の構造です。この部分は箱型になっており,何とその中にはこぶし大の石が約7tも詰め込まれているのです。その重みによって大鳥居は自立し,風や波,高潮にも耐えられるというわけです。