第348回 海洋プラスチック問題
最近海洋プラスチックが問題になっています。意外に思われるかもしれませんが,海に流れ着いているごみの8割は,陸から発生しています。中でも,道路上のごみは雨風によって流され,水路に流れ込み,それが海に流れ込みやすいのです。そのため,道路上のごみをいかに減らすかが重要な問題になっています。
海のごみを調査するには,今まで船で網を引き,底に溜まったごみを調べていました。今ではアルバトロスという調査装置を水面に浮かべて調べており,今までより調査の能率は良くなっているようです。ただし,その後の分析が一苦労です。採取したごみに混じっているプラスチック片を,人の手によって一つ一つピンセットで取り出して調べているのです。この調査や海洋プラスチック問題に取り組んでいるのが,一般社団法人ピリカ代表の小嶌不二夫氏です。
氏が2020年度に全国120地点で行った調査では,人工芝や農業用肥料の殻,発泡スチロール,レジャーシート,ロープといったプラスチック片の流出が確認されました。さて皆さん,これらの中で最も多かったプラスチック片は何だと思われますか。
それは何と人工芝の破片で,全体の約20%を占めていたそうです。サッカーやフットサル,野球場の人工芝が,水路を通って海に流出しているのです。次に多かったのが,農業用肥料の一種である「コーティング肥料」の空き殻で,それが全体の約15%を占めているそうです。「コーティング肥料」とは,肥料がプラスチックのカプセルに包まれているものです。そのカプセルの隙間から成分がジワジワと染み出す仕組みです。
その肥料が抜けた殻が,水田の外から海へと流れ出しているのです。よって今後の対策としては,人工芝の流出やコーティング肥料の問題の解決が大切です。もちろん,世界中の一人一人が,「ごみのポイ捨てをしない」ということを厳守することは,当然のことです。なお,このブログは,小嶌氏が大阪で行った講演のダイジェスト文をもとに記述致しました。ご興味のある方はぜひ,(株)ピリカなどのHPを検索してみて下さい。