第347回 スキーと人生

皆様、スキーはされたことがありますか。私は、出身が群馬県と言うことで、小さい頃からスキーとは縁があり、楽しんできました。昔の板はとても長く、安全装置もなく、雪山に突っ込んでも板が外れず、捻挫などの怪我もよくありました。
我流で覚えたために、いつまでたっても上手くならず、ある時からいつもの私の性分で、「スキー板は、あんな長い長方形のような形をしているのに、なぜカーブすることができるのだろうか」と言う事から研究を始めることにしました。

皆さんはこの問いにいかがお考えですか。
「曲がるときには腰をぐいっと捻るから曲がるのだろう」と言う方もいらっしゃるかもしれません。
正解はスキーの形状です。スキーにしても、スノーボードにしても、その板をよく観察すると、いわゆる女性の体のように、腰の部分がぐっとくびれていることがわかります。このくびれがスキーの回転のカギを握ります。つまりスキー板を曲げたいときは、このくびれを雪面に強く押し付ければ良いわけです。そうすればそのくびれの線に沿ってスキーは自然に曲がっていきます。
最近は、カービングスキーと言って、板の長さはは短めでよく曲がるスキー板が主流です。なぜ昔の板と違ってよく曲がるかと言えば、そのくびれがより強調されているからです。

このようなことを考えると、スキーで上手に回転をするにはスキーの先端をまず雪面に押し付けて、次にそのくびれを意識しながら体重をかけ続ければ良いと言うことがわかります。
私は、運動にしても勉強にしても、まずは原理、原則を捉えるべきであると考えていますが、スキーにもそれが当てはまり、こういうことを意識して練習するのとしないとでは上達スピードが変わってきます。

さて、スキーで1番難しいのは、スキー板の進行方向を変える時です。斜面の1番急なライン (これを最大傾斜線といいます)に対して、例えば右下方向に滑っているとします。これを左下方向に進路変更するには、いちど体を浮き上がらせて左内側にかかっているくびれの押し付けを解除します。次にくびれの押し付けを右内側に切り替えます。この時一瞬ですが、スキーは最大傾斜線に向かって直滑降をするように走り出そうとします。その時、自分の体は谷底に向かって落とされるように感じます。
スキーヤーにとってこの時が1番怖い瞬間です。体が谷底に向かって落ちていくような恐怖感を覚えるからです。しかし、この恐怖感を避けて横方向に逃げようとするとかえってスキーは横に突っ走り、制御不能となり転倒しやすくなります。
逆に開き直って、谷に向かって「エーイ、ままよ」と身を投げ出して行く方が、良いターンができます。

こんな経験を積み重ねるうちに、ある時私は、「スキーはまさに人生そのものだな」と感じるようになりました。人生でも、困難な事態に遭遇した時、恐れずにその事態を直視し、正面からぶつかっていくほうがピンチは回避し易いものです。ところが、中途半端で安易な解決策を取り、その事態から目をそらそうとすると、かえってピンチは増幅します。
「たかがスキー」と言ってしまえばそれまでですが、そんなことも教えてくれるスキーは私のとって、身も心も完全にリセットできる最高のスポーツで、いくつになっても続けていきたいものだと思っています。以下は最近のスキー場の風景です。しばしその風景をお楽しみください。

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