第341回 なぜ日本語には外来語が多いのか?

日本語には多くの外来語が入ってきています。なぜ日本語にはこのように外来語がたくさんあるのでしょうか。これを解くカギは,外国語の文法を学ぶとよくわかります。例えば,フランス語やドイツ語のヨーロッパ語。これらの言葉には,女性名詞や男性名詞など「性」があり,どの性に属するかによって,その名詞を修飾する形容詞などの形が決まります。

例えば,フランス語に日本語の「げた(geta)」という言葉が入るときのことを考えてみましょう。このようなとき,フランスでは「“げた”は男が履くものだから,男性名詞である」という見解と,「いや“geta”はaで終わる言葉だから,女性名詞である」という見解がぶつかって,共通認識がなかなか定まらず,その言葉が従来からあるフランス語の中に入りにくいという事情があります。

では日本語はどうでしょうか。例えば,“cool”という言葉が日本語に入るときは,ややこしい「性」などは関係ありません。ただ一つ,「“cool”は“クール”と表記する」と決めるだけで済みます。さらに,何よりも便利なのが日本語の「助詞」の存在です。日本語では「~は」や「~が」がその言葉に付けば,「その言葉は名詞である」とわかり,「~な」などが付けば,「形容詞である」とわかります。例えば,「〇〇君はクールな人だ」と言えば,「“ク―ル”は形容詞として使われている外来語である」とわかります。

日本語にはこのような機能があるために,外来語がどんな品詞の言葉であっても,容易に日本語に取り込むことができるのです。

これらの知識は先日,『日本語の大疑問』国立国語研究所編〈幻冬舎新書〉を読んで,得ることができました。この本を読むと,「明治時代には“犬”のことを“カメ”や“カメヤ”と言っていたことがあるが,それにはどのような背景があるのか?」などがわかります。

また,「イヌ年のことをなぜ『犬年』ではなく『戌年』と書くのか」などもわかります。さらに興味深いのが,「百貨店で使われる隠語」です。皆さんは百貨店で「横浜からお越しの松坂様,お近くの売り場までご連絡下さい」などの放送をお聞きになったことはございますか。この放送にはある特殊な内容が含まれているそうです。

このような内容にご興味を持たれた方は,ご一読をお勧めします。