第340回 塾講師の目指す姿
大手予備校,代々木ゼミナールの創業者,高宮行男氏が「予備校講師は五者を兼ねねばならない」と言った話は有名です。私も塾で生徒を教えていたときにこの話を知り,その五者を兼ねようと努力しましたが,なかなかに大変であると痛感しました。さて,ではその「五者」とは何を指すのでしょうか。
一つ目は「学者」です。これは最も基本的なことで,担当科目の知識が豊富な人になることを指します。二つ目は「役者」,三つ目は「芸者」です。講師がいかに知識が豊富であっても,それを単調にボソボソと伝えるのでは,生徒はついてきません。このとき講師は教室を舞台として,いかに生徒を笑わせたり,感動させたり,ヤル気を起こさせたりするかを考えることが大切です。
四つ目は「医者」です。講師は生徒のもつ問題点や課題を見つけ,それを取り除いてあげることが大切です。このときに重要なのが「観察力」でしょう。講師は日頃からしっかりと生徒を観察し,「なぜ伸び悩んでいるのか」とか,「どうしたらヤル気をもってもらえるか」などと考え続けねばなりません。
五つ目は「易者」です。講師は生徒に対し,「このような目標を達成したら,こんな夢が実現できるよ」などと生徒を鼓舞し,進むべき道を示してあげることも大切なことでしょう。このような五つの能力すべてを兼ね備えるということは,至難の業かもしれません。しかし,それらの力をそれぞれ少しずつでも向上させていくことは,講師自身の成長にもつながっていくことで,また,欠かせないこととも言えるでしょう。