第303回 「繊細君と残念な上司」

先日私は「繊細君と残念な上司」渡部卓著<青春出版>という本を読みました。
渡部氏は、早稲田大学政経学部を卒業後、いろいろな会社での実体験や、アメリカでのMBA取得、コンサルティングなどの経験を経たのち、現在は産業カウンセラー、帝京平成大学や武漢理工大学教授などを務められています。
この本を読んでいると、氏の実体験もふんだんに語られているので、会社や大学での若い人の行動や考え方がよく理解できます。

私も含め、中高年の人間から若手社員を見ると、「意思をハッキリ示さないから、何を考えているか分からない」「いちいち指示を出さないと動けない」などのネガティブな印象を抱きがちです。
氏は、彼らの繊細すぎるともいえる言動の背景には、大きく分けて次の3つの共通点があると述べています。
まずは「不安心理」。
現在の30代ぐらいまでの世代は、多感な時代に社会が劇的に変化する衝撃を嫌と言うほど経験しています。
そのため、彼らの心理の奥深くにその経験が強く反映しているようです。

2番目は「同調圧力」。学校生活や行動で、過度の連帯感や所属感、団結を求められ、はみ出すことを許さない空気が強まっており、それが若者の考え方や行動に影響を与えているようです。

3番目は「doing(何をするか)よりもbeing(どうあるか)を重視する価値観の転換」です。
例えば、昔はハワイへ行ったとか,高級車を買ったとかに価値が置かれていましたが、今の若者はオンライン飲み会とか無料のソーシャルゲームをプレイするなど、「目に見えない価値」に心から満足しているようです。

このような価値観を持つ若者に対し、中高年の上司が自分なりの価値観を押しつけると、退職などに結びつきやすいようです。
今の繊細な若者は「NOを言えない」と同時に「NOを言われ慣れていない」ようです。
そのため、ストレス耐性に弱く、心が折れやすいようです。

では、以上のような特性を持つ若者に対し、年上の上司はどのように接していったらいいのでしょうか。
そのキーワードは「かりてきたねこ」だそうです。
これを知って私は、「何て分かりやすい説明だろうか」と感動しました。

詳しくは本書に譲りますが、「かりてきたねこ」とは、次の7つの心がけです。
「か」・・・感情的にならない。
「り」・・・理由をきちんと話す。
「て」・・・手短にすます。
「き」・・・キャラクター(性格や人格、外見や言動の特徴)には触れない。
「ね」・・・根に持たない。
「こ」・・・個別に伝える。
以上です。ご興味を持たれた方は、是非御一読下さい。