第33回 最近の大学の入学式

以後の文章は、大阪大学 大学院 人間科学研究科 教授 小野田正利氏の講演会の内容からヒントをいただいております。

昔の大学の入学式や卒業式は、「学生のみが出席する」という形が一般的でした。しかし、1980年代の後半からは、親御さんも一緒に参加するという形に変わってきたようです。

ある大学の事務の課長さんは、入学式や卒業式の会場のイスの数をいくつ用意するかで、毎年頭を悩ますそうです。ちなみに、その大学でのイスの数のめやすは、「入学する学生数×3.5」だそうです。3.5という数字には、「本人、父、母、そしておじいちゃんまたはおばあちゃん」が見込まれているそうです。そして、式の当日には、式の始まる1時間も前から「われ先に」と父親や母親が最前列の席をとるために走り回るそうです。この光景は、保育園の入園式とか小学校の運動会そっくりだということです。

このように、今や大学はIT産業ならぬ「至れり(I)尽くせり(T)」の機関になっているようです。一昔前の大学生なら、とたえ両親と一緒に来ても「父ちゃん、母ちゃん、大学の入学式は俺自身のことだから、俺一人で行ってくるよ。2人はこのファミレスでお茶でも飲んで待っててよ」などと言って一人で出席したことでしょう。この入学式の現象が、海外の若者に比べ、今の日本の若者がひ弱になってきている徴候だとしたら、日本の将来が少し不安になります。