第32回 アドラー心理学②
では、アドラー心理学では、先ほどの例について具体的にどのように対応するのでしょうか。
例えばその1つとして、次のような対応があります。部屋の中に大きな箱を置きます。そして母親は子供にこう宣言します。「○○ちゃん、お母さんはあなたがおもちゃで遊んだ後、片付けてくれるとうれしいわ( Iメッセージを使う)。 もし、ちらかしっぱなしでお母さんが片付けるとなると、とても大変なのでそれはやめにしたいの。そこで、もしあなたが片付けをしないときは、お母さんはそのおもちゃをこの箱の中に入れるので、了解してね。」そして、それを子どもとの約束にします。
さて、その結果はどうなるでしょうか。
もし、子どもがちらかしっぱなしにすると、大きな箱の中はおもちゃで一杯になります。すると子どもは次のとき、何かのおもちゃで遊ぼうとした場合、その箱の中をひっかきまわして探さねばなりません。そこにアドラーの真髄の1つがあります。
それは、人間は体験の中から学ぶということです。簡単に言えば、「痛い思いを通じて学ぶ」ということでしょうか。親がいつまでも子どもの後を追いかけて片付け回っていたとしたら、いつまでたっても子は自立できません。アドラーは自分の領域と他者の領域を分け、それぞれに踏み込んではならないと言っています。親離れできない子、子離れできない親が増えていると言われる昨今、それはとても大切なことのようです。