第298回 スマホ脳

私は先日、『スマホ脳』アンデシュ・ハンセン著〈新潮新書〉という本を読みました。そのきっかけは、スマホの利用に対する何か漠然とした不安です。iPadを紹介したスティーブ・ジョブズ氏は、自分の子どもにはiPadを使ってよい時間を厳しく制限していたそうです。このことからもわかるように、スマホに依存しすぎると、何か大変なことが起きると私は感じています。

スマホ利用について、私自身の変化の一つは、「読書量が以前に比べて減った」ということがまず挙げられます。ついつい、Facebookなどを見ていると、読書の時間がなくなってしまいます。Facebookの利点としては、「他の人の世界を知ることができる」ということが挙げられます。自分とは違う世界で生きている人の生き様や考え方、情報を知ることができ、それはそれなりに大変役立ちます。

一方で、それにはまりすぎてしまうと、読書などを通じ自分自身を掘り下げ、自分の個性を磨いていくという時間が減ってしまいます。そのため、Facebookはできるだけ短時間の利用に控えています。それでも時々「あなたの今週のiPadの利用時間は先週より○○%増えて、1日平均△時間です」などのメッセージを受け取ると、「スマホをそんなに利用しているのか!」と驚いてしまいます。

『スマホ脳』を読むと、スマホがじわじわと脳をハッキングしていくメカニズムがよく理解できます。人によっては、スマホを身近に置いていないと不安に思う人もいます。また集中して仕事をしていても、スマホの着信音が鳴ると、仕事の手を止めて、ついついスマホを開いてしまいがちです。このような傾向は、スマホに脳をハッキングされている前兆かもしれません。

人間は、20万年前に出現し、徐々に進化してきました。今の人間の脳は生物学的に見ると、まだサバンナで暮らしている程度の適応力しかないそうです。それなのに、この10年間でのスマホを中心とした変化は「劇的」としか言いようがなく、それに適応できていないために「うつ」などの症状に悩まされる人々が増えているようです。

詳細は本誌に譲りますが、スマホは特に子ども達に悪影響を与えることは事実のようです。それを防ぐには、毎日最低1時間の運動をすること、9~11時間の睡眠をとること、そしてスマホの利用は1日最長2時間までとすることだそうです。しかし現実はというと、それを守れている子どもはたった5%しかいないとのことです。