第268回 人間は機械のような存在なのか?

青山学院大学の福岡伸一教授の講演のダイジェスト文を、興味深く読みました。

生物は「機械のような存在」なのでしょうか。つまり、「生物が食べる物は全て、体温や運動のエネルギーに変わる。そして、その燃えかすは二酸化炭素や尿、糞に形を変えて体外へ排出されるのである。」という考えは正しいのでしょうか。

その考えに疑問を持ったシェーンハイマーという学者は、「消えないマーカーペン」で色を付けた食べ物をマウスに食べさせる、とうい実験を行ったそうです。その結果、「食べ物の半分以上が体の一部に成り代わっている」とわかったそうです。

これは、「自動車とガソリン」に例えると、よくわかります。自動車にガソリンを入れて車を走らせると、ガソリンはエネルギーを発生させ、二酸化炭素などを排出しますが、自動車自体は変化しません。ところが、生物はそれとは違って、「ガソリンが車のハンドルや車体の一部に変化する」というようなものです。生物では、食べ物の一部は体内にとどまり、1年もたつと、生物の体はすっかり入れ替わってしまう、とのことです。特に、消化管の細胞は、2~3日で入れ替わってしまうそうです。

このことから、「うんち」の主成分は「食べかす」ではなく、「体のかす」だそうです。よく「人間の体は食べたものからできあがっている」と言われますが、その通りのようです。このような生命の流れを「動的平衡」というそうです。生物は「変わらないために、常に少しずつ変わり続けていく」ようです。

私はこの文を読んで、「食べ物の大切さ」と同時に、「生活や考え方も、周りの状況に応じて常に変わり続けていくことが大切なのではないか」と感じました。