第29回 葛飾北斎の偉大さ
アメリカの雑誌「LIFE」では、「この千年間で最も偉大な業績を残した世界の人物百人」という特集を行いました。その中には、イギリスのシェイクスピア、インドのガンジー、アメリカのエジソンなどの名が挙げられています。それらの人々と並んで、日本人としてはただ一人、葛飾北斎が選ばれました。その理由は、北斎の技法がヨーロッパの印象派を代表するモネやゴッホに多大な影響を与えたということでしょう。
しかし、北斎の偉大さはそれだけに留まりません。平均寿命が50歳程度といわれる江戸時代にあって、北斎は90歳まで生きました。あの有名な「富嶽三十六景」は70歳を過ぎてから描かれたそうです。北斎は、ある豪商の依頼で、長野県小布施町にあるお寺の天井絵を描いたことでも有名です。そのときの北斎は80歳を超えていました。北斎は江戸―小布施の往復500キロの道を四度も通い、83歳でその絵を完成させました。
北斎の若さの秘訣は、「人生最後の最後まで成長し続ける」ということだったそうで、新しい絵の境地を求め続けました。そして、そのたびに改名したそうで、その回数は30回にも上ったそうです。
北斎の長生きの秘訣は、「バランスの取れた食事とストレスのない日々」だったそうで、現代の我々にも参考になりそうです。90歳で息を引き取るときには、「あと10年、いやせめて5年生かしてくれ。そうすれば、まことの絵師になってみせる」とつぶやいたそうです。これを知って、私も「絶えず成長し続ける人生を送ろう」と強く思いました。