第70回 無の境地

福岡県に94才になる外科医の井口さんという方がいます。井口さんは学生時代にライフル射撃で国体に出て、2年連続優勝を遂げました。この競技は300m先の的に向かって1分間に5発弾を撃ち、その得点を競うものです。

その時の井口さんの得点は、10点,9点,9点,9点,7点で、合計44点だったそうです。最初の4発は無心で撃てましたが、最後は少し雑念が入り、的の真ん中から少し右にそれてしまったそうです。それがマイナス3点の7点だったそうです。

しかし、マイナス3点といっても、的の中心からたった15cmほどのズレです。300m先の15cmのズレというのは、銃の先端がたった0.3mmほどズレた結果だそうです。少し雑念が入っただけにしても、ここまで正確に撃てるのだと、とても驚きました。その境地に至るには、繰り返し練習が不可欠で、それが無の境地に入る門だそうです。