第473回 コカ・コーラの営業
私は大学時代,ヨーロッパ旅行の資金を作るためいろいろなアルバイトをしました。その一つに,京都駅にある全てのKIOSKにコカ・コーラを配給するという仕事がありました。
その配給拠点には,定時になるとコカ・コーラを満載した真っ赤な車が止まり,制服を着た筋骨たくましいお兄さんがボトルが入ったケースを次々と荷下ろしします。私はそのお兄さん方を見て「何とかっこいいお兄さん達なんだ!」と憧れたものです。そんな背景もあって,今回は『コカ・コーラを日本一売った男の学びの営業日誌』山岡彰彦著〈講談社+α新書〉を読んでみました。
コカ・コーラを車に積んで,色々なお店やスーパーを回り商品を供給する仕事は,体力も必要だし他社よりも少しでも売れるような工夫や努力も求められます。雨の日はずぶ濡れになりながら仕事をしなければなりませんし,店主からの厳しい要求やお小言も受けねばなりません。そして,そのルートを日々回っているだけでは営業成績はジリ貧となってしまいますから,新規開拓などの努力も求められます。
山岡氏は1980年に高知市にあるコカ・コーラの営業所のルートセールスマンからスタートしました。その後1995年には,日本コカ・コーラ社主催の全国セールスフォースコンテストで第一位を獲得するまでに躍進されました。
私自身は営業の仕事経験はありませんが,この本を読むと営業の仕事の大変さや大切さと,その根本に横たわる「営業の本質」が理解できたように思いました。その本質とは,決して「立て板に水」のような説明をして,商品の良さを相手に売り込み,有無を言わさず「売りつける」ものとは違うようです。むしろ「人の喜び,我が喜び」というような精神を持ち,相手の心に寄り添い,相手に喜んでもらうような行動を取り続けることに近いのではないかと感じられました。