第364回 風鈴の音色

昔,私が小・中学生の時代を過ごした家は,平屋で風通しの良い昔ながらの一軒家でした。夏になると縁側に座り,スイカを食べ,兄弟姉妹たちとスイカの種の飛ばし合いをしたことが,懐かしく思い出されます。

その家の軒先には風鈴が吊り下げられ,風が吹くと「チリリリーン」と鳴るその音色に涼しさを感じたものです。風鈴の起源は約2千年前の中国で,風の向きや音の鳴り方によって吉凶を占った「占風鐸(せんぷうたく)」であるといわれています。

これを僧侶が日本に持ち帰って,青銅製の「風鐸」が魔除けとして寺院のお堂や塔の軒先に吊るされるようになりました。江戸時代になると,それが庶民の間に広がり,ガラス製の江戸風鈴,金属製の南部風鈴,陶器製の伊万里風鈴などが作られるようになりました。

また,私の家では鈴虫を飼っていて,キュウリなどのエサをやり,その虫の声を毎日楽しんでいました。以前,「日本人には虫の声を聴き分け,その音色を楽しむ感性があるが,外国人にはその音は雑音としか聞き取ることができない」という話を聞いたことがあります。

虫の声にしても,風鈴の音色にしても,日本人は繊細な耳でそれらの音色を楽しむことができるのですね。最近の日本は,何かと人の心が殺伐としがちな世の中になりつつありますが,このような日本人ならではの感性を大切にして,潤いのある生活を送っていきたいものです。

土の中の種子に光が当たるということは,ライバルとなる地上の植物が取り去られたことを意味します。それを察知したシードバンクは,一斉に芽を出し始めるというわけです。これではいくら草取りをしても雑草はなくならないわけですね。

このような作戦を知って私は,この作戦はビジネスにおいても重要で,大いに使うべきではないかと感じました。

私共のような小さな出版社では,「スピード感のある経営法」が求められます。このたび私共では,他の出版社様に先駆けて,新しく中学校に加わった単元も含めた,最新の問題集を発行しました。そのテキストは,まだ類書が出ていないということもあり,大変好評で「こんなテキストが欲しかった」と喜ばれています。このように私共は,今後も雑草の逞しさに負けぬよう,「チャンスの女神の前髪を捉える経営方針」を貫こうと思っています。