第363回 雑草は草刈りをしてもなぜまた生えてくる?

私の家には小さな庭があり,トマトやキュウリ,サラダ菜などを育てて食事に彩を添えています。このとき,これらの栽培に際して,厄介なのが雑草です。雑草は至る所に生えてきて,土の中の養分を奪ったり,他の植物に光が当たらないように邪魔をしたりします。では,その雑草を抜いて処分してしまえば,もう雑草は生えてこないのでしょうか。

いえ,いえ,しぶとい雑草のことですから,抜いても抜いてもまた同じような場所から次々に生えてきます。私はその現象を「他の場所から種が飛んできて,またそこで発芽したのだろう」とか,「根の取り残しがあり,その根からまたその植物が復活したのだろう」などと思っていました。

確かに,そういう場合もあるようですが,最近「そのような雑草は,草取りをすればするほど増えていく」という仕組みを知り,とても驚きました。

それは「シードバンク(seed bank)」と呼ばれている仕組みです。これを直訳すれば「種子の貯蓄」です。雑草が生えている地面の下には,膨大な数の雑草の種子が蓄積されているのです。そして,それらの種子は,虎視眈々と辛抱強く「発芽のチャンス」を狙っているのです。

小学校の理科では「発芽の条件は温度と水と酸素である」と教わります。しかし,これらの雑草の種子は,その3条件が揃ったとしても発芽しません。発芽したところで,土の上はすでに既存の植物で覆われているのですから,勝ち目が無いからです。では,シードバンクはどんなチャンスの到来を待っているのでしょうか。

それは「光」です。

土の中の種子に光が当たるということは,ライバルとなる地上の植物が取り去られたことを意味します。それを察知したシードバンクは,一斉に芽を出し始めるというわけです。これではいくら草取りをしても雑草はなくならないわけですね。

このような作戦を知って私は,この作戦はビジネスにおいても重要で,大いに使うべきではないかと感じました。

私共のような小さな出版社では,「スピード感のある経営法」が求められます。このたび私共では,他の出版社様に先駆けて,新しく中学校に加わった単元も含めた,最新の問題集を発行しました。そのテキストは,まだ類書が出ていないということもあり,大変好評で「こんなテキストが欲しかった」と喜ばれています。このように私共は,今後も雑草の逞しさに負けぬよう,「チャンスの女神の前髪を捉える経営方針」を貫こうと思っています。