第354回 字幕翻訳のプロからの提言

皆さんは字幕翻訳家として有名な戸田奈津子さんをご存知ですか。戸田さんはスティーブン・スピルバーグ監督の「E.T.」などの字幕翻訳を手掛けたりした,日本一の字幕翻訳家です。たまたま日経新聞夕刊の「人間発見」のコーナーで,戸田さんへのインタビュー記事を見つけ,その内容に「やはり,そうか!」と感心してしまいました。

戸田さんはそのインタビューの中で,「英文法は頭が柔らかいうちに,しっかり身につけておかないと,後から勉強するのは大変です。会話だけ先にやっても,理屈がわかっていなければ,絶対に伸びません。いくらペラペラしゃべっても,三単元のsを落としていたら教養を疑われ,敬意を払ってもらえません」と述べておられます。

また,「文科省には『英語より先に,まず日本語を勉強させて下さい』と言いたいです。字幕の仕事をしたいならばまず,日本語を勉強しなさい。それに尽きます」とも述べておられます。それはいかに英語で意味を理解できても,日本語の語彙や言葉のニュアンスを知らないと,的確にそれを日本語に直せず,絶対にうまくいかないからだそうです。

多くの塾の先生方も,今の英語と日本語の学習の現状に気づいておられるようで,当社の「ろんりde国語」や「読解はかせ」の注文が少しずつ増えているのも,その証のような気がします。以前にもお伝えしましたが,小学校や中学校の現在の英語の教科書では,可算名詞,不可算名詞,冠詞,定冠詞などの説明やそれを使いこなすためのトレーニングの場がほとんどありません。そのような基礎的なところを曖昧にしていては,再び戸田さんに「理屈がわかっていなければ,絶対に英語力は伸びません」と指摘されてしまうことでしょう。