第317回 効果的な英語指導法

先日、NHKの「プロフェッショナル」という番組で、夜間中学教師、入江陽子氏の奮闘ぶりを観ました。
氏の勤務する夜間中学には、ブラジルや東南アジアから日本に働きに来ている若者たちが多く学んでいます。
彼らの多くは、経済的にも体力的にも厳しい仕事に就いています。

さらに、「日本語がよく理解できない」というハンデを背負っているため、何かと苦労の多い日常生活を送っています。
氏はそんな若者たちに日本語を教えています。
その指導ぶりを見ていて、日本の子どもたちへの英語指導法について多くのヒントがありました。

氏はまず若者たちに平仮名や易しい漢字の読み書きを教えます。
やはり語学学習の基本は、読み書きだからです。
その後、易しい文章を読んだり、書いたりする指導に移ります。
その課程の中で若者たちは少しずつ日本語をマスターしていきます。
私はこの指導ぶりを観ていて、「やはり、このステップを踏むことが語学学習の王道だろうな。」と感じました。
今年から中学校の英語の教科書が急に難しくなったため、生徒たちから多くの悲鳴が上がっています。

その問題の根本的なところはどこにあるのでしょうか。
それは、小学生の英語指導が「英語に親しむためだけのもので、聞くことや簡単な会話だけにとどまっている」ことにあると思います。
そのような現状のまま中学へあがった生徒は、中学校では、いきなり英語の読み書きを求められます。
これでは英語嫌いを増やすだけのことになるでしょう。
一方、小学校の国語指導では、小学校一年から、ステップを踏みながら読み書きを覚えていきます。
同じ語学学習なのに、なぜ英語だけ今回のような指導法がとられるようになったのでしょうか。
とても理解に苦しみます。

そのような問題について深く考えようと、先日私は認知科学、言語心理学、発達心理学を専攻している今井むつみ氏が書いた「英語独習法」〈岩波新書〉という本を読みました。
そこでようやく、合理的な英語学習法について理解することができました。
くわしくは本書に譲りますが、英語学習を心理学的アプローチから考察するという点が、とても新鮮に感じられ勉強になりました。

そして、そのような合理的な英語学習法を国を挙げて実践し、成果を上げているのがフィンランドだそうです。
本書では、フィンランドの英語の教科書についても詳述されています。その内容はとても興味深いものでした。