第323回 未来のドリル

私はお盆の休み中『未来のドリル』河合雅司著〈講談社現代新書〉という本を読みました。
氏は作家,ジャーナリスト,人口減少対策総合研究所理事長などをされ,ベストセラーとなった『未来の年表』などの著作でも知られています。
コロナ禍によって,浮き彫りになったのは少子高齢化と人口減少という我が国最大の国難を,コロナ禍が加速させたという事実です。

そして,その深刻さは,さらに長い年月をかけて日本社会を破壊していくことでしょう。
その中でも,最も本質的な危機として本書が位置付けているのは「社会の老化」です。
「社会の老化」が進むと,社会全体の思考や発想,行動が「守り」に入ってしまい,社会全体の活力が損なわれてきます。
例えば,イベントの開催などにしても,科学的根拠に乏しく合理的な説明がなくてもその中止を決め,参加予定者は「仕方ないよね」とすぐにその決定に従ってしまうようなムードです。

この背景には,「予定通り開催して感染者を出そうものなら,世間の批判の的になる。そんな危険を冒すよりも,最初から中止にしてしまった方が無難である」といったネガティブ思考も横たわっています。
氏はこのような現状を打破するのは若い世代の活躍が大切であると訴えています。
ちなみに,フィンランドのサンナ・マリン首相が就任したときの年齢は34才で,政権発足当時の閣僚の平均年齢は47才でした。

これに対し,菅首相の就任時の年齢は71才,閣僚の平均年齢は60.4才,自民党4役の平均年齢は71.5才でした。
氏は若者の活躍を土台にし,日本を変えていく切り札として4つの提案を上げています。
それぞれはとても画期的なもので,今の日本の制度を大きく変える荒療治的な案です。
それらの実現は思い切った決断と,断固たる実行力が不可欠でしょう。
この本を読んで,日本の現状を変えるには,それらをやり切るくらいの覚悟と行動力が必要だと感じました。